
親が転んでいたのを、あとから人づてに知った。どうして言ってくれないんだろう…
この記事では、親が転んだのに連絡してこないときの受け止め方と備えについて解説します。
親が言わないのは隠しているというより、言わない理由があることがほとんどです。
理由が分かると、言ってもらいやすくする手も、言われなくても気づく手も見えてきます。
私自身も、あとから知って驚いた経験があります。
責めるより先に、なぜ言えなかったのかを知るほうが次につながります。
親が転んだのを、あとから知るのはよくあること
連絡がつかないのではなく、つながっているのに言われないという状況です。
毎週電話していても、そのときには何も言わなかったというケースが多くあります。
近所の方や、きょうだい経由であとから知ることも珍しくありません。
連絡が取れないことへの備えと、言ってもらえないことへの備えは別のものです。
電話の回数を増やしても、話してくれなければ同じことが起きます。
ここを分けて考えるところから始めます。
連絡がつかない問題は手順で、言われない問題は関係と仕組みで解きます。
連絡が取れない場合の動き方は、別の話として整理しておきます。
そちらは、電話に出ないときの手順をあらかじめ決めておく形になります。
手順は離れて暮らす親が電話に出ないときでまとめています。
親が言わない5つの理由
まずは、親の側で何が起きているのかを整理します。
まずは、いちばん多く聞かれる理由からです。
心配をかけたくない
もっとも多いのが、子どもに心配をかけたくないという気持ちです。
仕事や子育てで忙しいことを、親のほうがよく分かっています。
遠方に住んでいると、知らせても来られないという遠慮も働きます。
- 親の気持ち:忙しいのに手間をかけさせたくない
- 親の気持ち:どうせ来られないなら言っても仕方ない
- 親の気持ち:騒ぎになるのが嫌だ
- 打てる手:大げさにしないと先に伝えておく
- 打てる手:知らせてほしい理由を、こちらから伝える
- 打てる手:来る来ないと、知らせるかどうかを切り離す
- 伝える言葉:「聞くだけで安心するから教えて」
- 伝える言葉:「来る来ないは別で考えるから」
- 避けたい言い方:「すぐ行くから言って」と負担を強める
- 伝える言葉:「電話で聞くだけで十分だから」
ここで効くのが、駆けつけなくても知りたいと伝えることです。
知らせる=来てもらうこと、と親が結びつけているケースは多くあります。
その結びつきを外すだけで、話してもらえるようになることがあります。
大したことないと思っている
本人のなかでわざわざ言うほどのことではないと処理されている場合です。
痛みが引いてしまえば、そのまま忘れてしまうこともあります。
本人にとっては日常の出来事で、報告する対象になっていません。
- 親の気持ち:すぐ立てたから問題ない
- 親の気持ち:わざわざ電話することでもない
- 親の気持ち:もう治ったから話す必要がない
- 打てる手:小さいことでも教えてほしいと具体的に頼む
- 打てる手:こちらから「変わったことなかった?」と聞く
- 聞き方のコツ:時期を区切って「今週は」とたずねる
- 聞き方のコツ:あざや痛みではなく、出来事として聞く
- 聞き方のコツ:他の話のついでに、軽くたずねる
この理由の場合、こちらから聞く形にすると出てきます。
漠然と何かあったかと聞くより、転んでいないかと具体的にたずねます。
質問が具体的なほど、思い出して答えてもらいやすくなります。
一人暮らしをやめさせられると思っている
言えば今の暮らしを変えられてしまうという警戒です。
同居や引っ越しの話を持ち出されるのを避けたい気持ちが働きます。
過去にそういう話をしたことがあると、この警戒は強くなります。

言うと家を出される、と思っていると、親は話してくれません。
打てる手は、暮らしを変える話とは結びつけないと伝えることです。
「知りたいだけで、引っ越しの話をするつもりはない」と先に言い切ります。
そのうえで、今の暮らしを続けるための備えとして話を進めます。
- 親の気持ち:言えば同居や引っ越しの話になる
- 打てる手:暮らしを変える話とは結びつけないと先に伝える
- 言い換え:「ここで暮らし続けるために知っておきたい」
- 約束すること:聞いても引っ越しの話は持ち出さない
- 積み重ね:約束を守った回数が、話しやすさをつくる
自分の落ち度だと感じている
転んだことを、自分の不注意だと受け止めている場合です。
恥ずかしさや、情けなさが先に立って言い出しにくくなります。
年齢のせいにされたくない、という気持ちも重なります。
- 親の気持ち:情けないと思われたくない
- 親の気持ち:年のせいだと言われたくない
- 親の気持ち:まだしっかりしていると思われたい
- 打てる手:年齢の話に結びつけない
- 打てる手:原因を家の側に置いて話す
- 打てる手:「段差が危ないね」と物のせいにする
- 避けたい言い方:「気をつけないと」と本人に向ける
- できること:つまずいた場所を一緒に片づける
- できること:明るさを足して、足元を見えやすくする
効くのは、原因を本人ではなく家の側に置く言い方です。
「気をつけて」ではなく「この段差、私もつまずいた」と伝えます。
本人を責めない形にすると、次から話してもらいやすくなります。
言うタイミングを逃した
言おうと思っていたのに、話の流れで言えなかったケースです。
電話の最初に子どもの近況を聞いているうちに、機会を逃してしまいます。
時間が経つほど、今さら言い出しにくくなっていきます。
- 起きること:電話の後半になるほど言い出しにくい
- 起きること:日が経つほど、今さら感が強くなる
- 打てる手:毎回同じ聞き方を続けて、機会をつくる
- 打てる手:電話の最初に親の話から聞く
- 打てる手:切る前に「他に何かある?」と一言添える
- 打てる手:話が途切れたときに一拍おく
- 避けたいこと:こちらの近況を長く話しすぎる
- 打てる手:電話の頭で「変わったことあった?」と聞く
電話の最初と最後に聞く場を作るだけで変わります。
こちらの近況から入ると、親は自分の話を後回しにします。
順番を変えるのは、今日からできる工夫です。
「言ってくれない」を責めても解決しない
あとから知ったとき、つい強い口調になってしまうことがあります。
ただ、そこで責めると次はもっと言わなくなります。
怒られた記憶が残ると、報告する動機がさらに減るためです。
「どうして言わなかったの」は、責めているように聞こえます。
「知らせてもらえると私が安心する」に言い換えると、受け取り方が変わります。
同じ内容でも、主語が違うだけで受け止め方は変わります。
主語を自分の側に置くのが、ここでも効きます。
親のためではなく、自分が安心したいからという伝え方です。
そのうえで、次からどうしてほしいかを具体的に頼みます。
言ってもらいやすくする3つの伝え方
ここからは、次から話してもらうための3つの伝え方を見ていきます。
まずは、理由の伝え方からです。
知らせてほしい理由を先に伝える
「教えて」とだけ言われても、親には理由が分かりません。
何のために知りたいのかを添えると、頼みの意味が伝わります。
ここでも、来る来ないの話とは切り離しておきます。
- ○「知っておきたいだけだから、来るとは限らないよ」
- ○「聞いておけば、次の帰省で見る場所が分かるから」
- ×「何かあったらすぐ言って」→ 何が「何か」か伝わらない
- ○「転んだとか、体調崩したとか、それだけ教えて」
- コツ:知りたい内容を、具体的に3つくらいに絞る
- コツ:紙に書いて冷蔵庫に貼っておく形もある
- コツ:一度で伝わらなくても、何度か繰り返す
理由が親にとって負担にならない内容だと伝わりやすくなります。
「駆けつけるため」だと、かえって言いにくくさせてしまいます。
知っておくだけ、という軽さで頼むのがコツです。
責めない反応を先に約束する
話したあとにどう反応されるかを、親は考えています。
怒られる、心配される、暮らしを変えられる、のどれかを想像します。
だから、反応のほうを先に約束しておきます。
- 先に伝える:怒らないし、大げさにもしない
- 先に伝える:引っ越しや同居の話にはしない
- 守ること:実際に話してくれたとき、約束どおり反応する
- 最初のひと言:「教えてくれてありがとう」から始める
- 避けたいこと:その場では受け止め、あとで蒸し返す
- 避けたいこと:きょうだいに言いつける形にする
大事なのは、約束を実際に守ることです。
一度でも責めてしまうと、次から話してもらえなくなります。
聞いた直後は「教えてくれてありがとう」から始めます。
小さいことも報告する習慣にする
大きいことだけ知らせてもらう形だと、線引きが親に委ねられます。
本人の基準では「大したことない」に分類されてしまいます。
そこで、小さいことも含めて話す流れにしておきます。
- 毎回の電話で「今週変わったことあった?」と聞く
- 親の話を先に聞いてから、こちらの近況を話す
- 話してくれた内容には、お礼をきちんと返す
- 聞く順番を毎回そろえて、流れをつくる
- 話が出たら、掘り下げずにまず受け止める
- 詳しく聞くのは、次の電話に回してもよい
- 聞いた内容は、その日のうちにメモしておく
毎回同じ聞き方をしていると、親も話す準備をしてくれます。
「今週も聞かれるから」と思い出しておいてくれる形です。
連絡の曜日を決めておくと、この流れが作りやすくなります。
言われなくても気づくための3つの備え
伝え方を変えても、話してもらえないことはあります。
まずは、親が何もしなくても伝わる形からです。
生活のリズムが伝わる仕組みを置く
親が話さなくても、生活が動いているかは伝わります。
毎日使う家電の使用状況や、人の動きを見るセンサーが該当します。
いつもと違う日が続けば、こちらから声をかけるきっかけになります。
- 電気ポットなど、毎日使う家電から知らせが届く形
- 廊下や手洗いの前に置く、人の動きを見るセンサー
- 親が覚えることはなく、普段どおり暮らすだけでよい
- いつもと違う日が続いたら、こちらから声をかける
- 置き場所は、親が毎日通る場所を選ぶ
- 知らせが届く条件は、あとから調整できるものを選ぶ
- 1か所から始めて、必要なら次の帰省で増やす
この形なら、親に話す負担をかけません。
言いにくいことを言わせずに済むという意味で、相性がよい方法です。
方法の全体像は離れて暮らす親を見守る10の方法でまとめています。
親が自分から知らせられる手段を用意する
電話をかけるのは、親にとって心理的な負担があります。
何と言えばいいか考えているうちに、かけずに終わってしまいます。
押すだけで知らせられる機器なら、その手間がありません。
- ペンダント型なら、身につけたまま押せる
- 押したあと、誰につながるのかを先に確認する
- 親が覚えるのは「困ったら押す」の1つだけ
- 防水のものなら、浴室でも押せる
- 身につける習慣がつくかを、選ぶ前に想像しておく
- 充電や電池の管理は、家族側で引き受ける
- 押したあとの流れを、親と一度確認しておく
言葉にしなくていい形だと、遠慮が働きにくくなります。
説明しなくていいぶん、使ってもらえる可能性が上がります。
備えの順番は一人暮らしの高齢者を見守るにはで整理しています。
帰省のときに家の中を見る
話してもらえなくても、家の中には様子が残ります。
家具の位置が変わっていたり、物につかまった跡があったりします。
帰省のときに、そうした変化を見ておくと手がかりになります。
- 家具の配置が、つかまりやすい形に変わっていないか
- 手すりの代わりに使われている家具はないか
- 階段や浴室の使い方が変わっていないか
- 滑り止めや手すりが、あとから付けられていないか
- よく使う物が、低い位置に移されていないか
- 浴室のマットや椅子が増えていないか
- 歩く速さや、立ち上がり方が変わっていないか
- よく使う部屋が、一階だけになっていないか
家具につかまって歩く形になっていたら、動き方が変わった合図です。
本人が言わなくても、住まいのほうが先に変わっていきます。
帰省時の見方は帰省したら実家が散らかっていたときでまとめています。
緊急の連絡先に、家族の名前が入っているか
もうひとつ、見落とされやすい備えがあります。
親が一人で受診したとき、家族に連絡が来るとは限りません。
本人が言わなければ、そのまま伝わらないまま終わることもあります。
- かかりつけの医療機関に、家族の連絡先が登録されているか
- 登録されているのが誰か(配偶者のままになっていないか)
- 近所の方に、こちらの連絡先を伝えてあるか
- 親の保険証や診察券の置き場所を把握しているか
- 見守りサービスを使う場合、通知先に誰を入れるか
- きょうだいのうち、誰が最初に受けるかを決めておく
- 連絡先を変えたときに、登録の更新を忘れない
特に多いのが、連絡先が古いままになっているケースです。
亡くなった配偶者の名前が残っていることもあります。
帰省のときに、一度そろえて確かめておくと安心です。
連絡先の登録は、親に頼まず家族側で手続きを進められる部分です。
手間のかかることを引き受けると、話も通りやすくなります。
本人が言わなくても、周りから伝わる道を用意しておく形です。
連絡の道が1本しかないと、そこが止まったときに何も分からなくなります。
電話と帰省で気づける手がかり
言われなくても、気づける場面はいくつかあります。
電話のときと帰省のときで、見えるものが違います。
| 場面 | 気づける手がかり |
| 電話のとき | 外出の予定が減っている/同じ話に「そういえば」が混ざる |
|---|---|
| 電話のとき | いつもより出るのが遅い/声の調子が違う |
| 帰省のとき | 家具につかまって歩いている |
| 帰省のとき | 家具の位置が動線に沿って変わっている |
| 帰省のとき | 階段や二階を使わなくなっている |
いちばん分かりやすいのが、家具のつかまり方です。
本人が意識していなくても、動き方は住まいに表れます。
ただし、これらは様子として受け止めるまでにとどめます。
気になることが続くときの相談先
転んだ回数が増えているなど、気になることが続く場合があります。
そのときに相談できる公的な窓口が用意されています。
介護が必要な段階でなくても、相談そのものは受け付けています。
入口になるのは、親が住む市区町村の高齢者福祉の担当課や地域包括支援センターです。
対応の内容は自治体ごとに違うため、できることは窓口でご確認ください。
この記事では親の状態の判断はできません。
体のことで気になる点が続くときは、かかりつけの医療機関にご相談ください。
よくある質問
親が転んだことを言ってくれない件について、よく寄せられる質問をまとめました。
- Qあとから知ったとき、親を叱ってもいいですか?
- A
- Qどうして親は隠そうとするのでしょうか?
- A
- Q電話の回数を増やせば気づけますか?
- A
- Q帰省したときに何を見ればいいですか?
- A
- Q転ぶ回数が増えている気がします
- A
まとめ:言わせるより、言わなくても伝わる形をつくる
親が転んだことを言わないのは、隠しているのとは違います。
心配をかけたくない、暮らしを変えられたくないといった理由があります。
理由が分かれば、責めずに次の手を打てます。
言ってもらう努力と、言わなくても伝わる備えは両方できます。
伝え方だけに頼ると、また同じことが起きる可能性が残ります。
親に負担をかけずに済むぶん、仕組みのほうが長続きします。

責めるところだった。まず「教えてくれてありがとう」から始めてみます。
今週できるのは、次の電話で親の話から先に聞くことです。
順番を変えるだけでも、出てくる話は変わります。
そこで出てきた話が、次の備えを決める材料になります。

